第4話:「これって、恋ですか?」
― オラクルカード編 ―
彼と会っていると、心の中が静かになる。
でも、どこかで「これって、恋なのかな?」と自問自答していた。
最近、千尋(ちひろ)は彼との関係に違和感を感じていた。
彼の優しさは本物だし、いつも楽しくて心地よい。
だけど、胸の中で何か足りない気がする。
あまりに心地よすぎて、逆にこの関係が“特別”じゃないんじゃないかと不安になる。
「私は彼を好きなのかな?」
それとも、ただ“安心したい”だけなのか?
彼の手を握ると、確かに温かさを感じる。でも、それだけじゃ、恋って言えない気がする。
◆
千尋は、ふとした瞬間に占いの広告を目にした。
“あなたの心の中の答えをオラクルカードで導きます”というキャッチコピーが、まるで自分に向けられているように感じた。
「占い、かな……」
すぐにスマホを操作し、予約を取った。
その夜、彼に会う前に、少しでも自分の心を整理したくて。
◆
電話占いが繋がった瞬間、穏やかな声の女性が応じた。
「こんにちは、千尋さん。今日はお悩みの内容を教えてください」
「ええ、実は……彼との関係が、どうしてもよくわからなくて。
心地よくて楽しいんですけど、これって恋なのか、ただの安心感なのか、自分でもよくわからないんです」
「なるほど、彼との関係について、オラクルカードを使ってリーディングしてみましょうね。
少しだけ目を閉じて、深呼吸をしてください」
千尋は深く息を吸い、ゆっくりと吐く。
静かな空気の中で、カードがシャッフルされる音が響いた。
「では、カードを引いていきますね。最初に出たカードは、こちらです」
「……それって、どんなカードですか?」
「『恋のハート』のカードです。
これは、純粋な愛情や心からのつながりを意味します。
千尋さんが感じている心地よさは、本当の愛情に向かうプロセスの一部であることを示していますよ」
「それ、どういう意味ですか?」
「あなたが感じている不安や疑問は、実は“心の扉が開く”前の一歩なんです。
このカードが出たということは、あなたが今感じている“安心”は、あなた自身の心が真実の愛を求めている証なんですね」
「……でも、それって、どうやって感じればいいのか、まだわからなくて」
「大丈夫です。次に引いたカードが、その答えを教えてくれますね」
女性の声が静かに続く。
「『直感のカード』が出ました。これは、千尋さんが心で感じていることを信じなさい、というメッセージです。
彼との関係がただの安心感ではないことを、あなたの直感がしっかりと知っています。
だからこそ、彼との接し方で、“恋”を感じる瞬間をもっと大切にしてみてください」
「直感……」
千尋は目を閉じて、自分の心を感じ取ろうとした。
ふと、彼との笑顔が浮かぶ。
無理に言葉を探さなくても、ただ一緒にいるだけで心が温かくなる瞬間。
それが、恋の始まりかもしれない。
◆
その後、千尋は彼に会った。
少しだけ不安を感じながらも、リラックスして会話を楽しむ自分がいた。
以前のように「これが恋だと思わないとダメ」と思っていた自分が嘘みたいだった。
途中、ふとした瞬間に手が触れ、しばらくそのままにしていた。
何も言わなくても、お互いに心がつながっていることがわかった。
「もしかしたら、これが恋かもしれない」
彼がそっと微笑むと、その笑顔が心に届いた。
✨編集後記
オラクルカードは、心の中の深層から答えを引き出すツールです。
理屈ではなく、“感じること”が大切だというメッセージを、カードは優しく伝えてくれます。
その瞬間が恋かどうかの答えを知るのは、外の世界ではなく、自分の心の中です。
