第3回:満月の夜、ふたりの距離が少しだけ近づいた
“もう一度会って話したい”——そう思えるようになった
椿先生からの「満月前後がチャンス」という言葉を胸に、沙羅は彼に再度連絡するタイミングを見計らっていた。
ちょうど満月の前夜、ベランダから月を見上げながらスマホを手に取る。
彼からの「最近忙しくてごめん」というLINEの返信以来、少しだけ気持ちが前向きになっていた。
思い切って、沙羅はシンプルな一言を送った。
「もし時間あったら、久しぶりにお茶でもしない?」
数分後。
画面に表示されたのは——
「うん、ちょうど話したいなって思ってた」
それは、まるで椿先生の言葉が導いてくれたかのようなタイミングだった。
再会
数日後、ふたりは以前よく通っていたカフェで再会した。
「久しぶりだね」
「ほんと。なんか、緊張する」
彼は少し痩せて見えた。沙羅も、少しだけ大人びた雰囲気になっていた。
何気ない会話から始まり、別れた理由、あの時言えなかった気持ち……。
話すうちに、少しずつ心の距離が縮まっていくのを感じた。
彼は言った。
「なんか、前より落ち着いたね。今の沙羅、すごく自然体でいいと思う。」
それは、彼女が焦らず“待つ”ことを学び、自分を整えてきたからこその変化だった。
占いの言葉が背中を押してくれた
その夜、沙羅は再び椿先生に電話をかけた。
「先生…彼と、会ってきました」
静かに聞いていた椿先生が、柔らかく微笑むような声で言った。
「あなたが自分を信じて、落ち着いて待てたからこその結果ですよ。占いは、未来を決めるものじゃない。あなた自身が選んだ道に、光を当てるためのものなんです。」
沙羅はその言葉を聞きながら、自然と涙がこぼれた。
迷っていたあの日、自分で何も信じられなかった自分が、いまはこうして前を向いている。
まだ“恋人”には戻っていない。でも——
彼との関係は、まだ“復縁”と呼べる状態ではない。
けれど、確実に、ふたりの距離はあの頃よりも近づいていた。
焦らず、ゆっくりと。
過去の痛みを乗り越えながら、ふたりは新しい関係を築こうとしている。