― まだ始まっていない。それでも、心がふわりと揺れた午後。
その人とは、ワインスクールの体験講座で出会った。
偶然、席が隣だっただけ。
自己紹介の時、「ワインは詳しくないけれど、楽しく飲めればそれでいいんです」と笑った彼の声が、妙に耳に残った。
休憩時間に「この中でいちばん飲みやすかったの、どれでした?」と聞かれた私は、
迷わず「ロゼ」と答えた。
「同じです」
彼もそう言って、グラスの底を見つめた。
ロゼワインは、赤と白の“あいだ”にある。
はっきりしない。だけど確かに、何かがそこにある。
恋の始まりにも似ている。
まだ名前もつけられない関係。
ただ、隣にいると少しだけ嬉しくて、帰り道がふわりと明るくなる。
そういう気持ちを、私は久しぶりに味わっていた。
講座の最後に開けられたのは、南仏プロヴァンスのロゼだった。
淡いサーモンピンクの液体に、春の陽ざしのような光が差し込んで、
グラスが美しく輝いて見えた。
ストロベリー、白い花、オレンジピールのような香り。
口に含むと、するりと軽く、ドライでキレのある飲み口。
「飲みやすいけど、芯がありますね」
私の感想に、彼がうれしそうにうなずいた。
帰り際、彼が言った。
「よかったら、また一緒にワイン飲みませんか?」
私は、少しだけ迷ってから、笑ってうなずいた。
まだ、何も始まっていない。
でも、何かがここから動き出す気がした。
ロゼのように、やわらかく、あたたかく、でも確かに。
“恋の入口”にふさわしい一本
プロヴァンス・ロゼ(辛口・ロゼワイン)
- 【産地】フランス・プロヴァンス地方
- 【品種】グルナッシュ、サンソー、シラーなど
- 【香り】ストロベリー、白い花、オレンジの皮、ハーブ
- 【味わい】淡くドライで、すっきりとした酸味/余韻は短く軽やか
- 【相性】冷製パスタ、生ハム、カプレーゼ、サラダ、軽めの和食
飲みやすさと上品な印象を兼ね備えたロゼは、
これからワインを始めたい方にもぴったり。
恋もワインも、やわらかな始まりを予感させてくれます。
まだ見ぬ恋に、そっと気づく午後に
LOIN(ワインショップ ロワン)では、
「飲みやすさ」や「季節感」からワインを選ぶこともできます。
気持ちが動いたそのとき、
何かを始めるきっかけになるワインが、きっと見つかります。