夜10時すぎ。
LINEの通知に気づいた瞬間、心臓が跳ねた。
「今日は遅くなるかも。明日、電話できるかな?」
――名前の登録は“〇〇さん”のまま。
“彼氏”とも“恋人”とも呼べない関係が、もう3ヶ月続いている。
最初から、少し不自然だった。
LINEは決まって深夜。週末はいつも「忙しい」の一言で済まされた。
でも、それでも良かった。
声が聴けるだけで、私の一日が報われた気がしたから。
「話があるんだ」
その夜、彼の声はいつもより静かだった。
「俺、結婚してる」
「でも……君といると、安心するんだ」
一瞬、時間が止まった気がした。
理解できない――いや、きっとどこかで気づいていた。
だけど私は、泣きながら言ってしまった。
「それでも、好きだよ」
そこから、歯止めがきかなくなった。
会えるのは平日の夜だけ。
記念日も誕生日も、彼の予定はいつも“家族優先”。
私の名前は、彼のスマホには残らない。
「あともう少しだけ一緒にいたい」
その言葉に縋って、日々を埋めていくしかなかった。
ある夜、帰り道で急に涙がこぼれた。
理由もなく、足が止まってしまった。
“私は、何になりたかったんだろう”
“愛されたい?奪いたい?それとも、忘れたい?”
そのまま、ぼんやりとスマホを開いて検索した。
【不倫 苦しい】
【占い 恋愛 やめられない】
出てきたのは、匿名の体験談と、電話占いのリンクだった。
「もしもし、こんばんは」
画面越しに聞こえた女性の声は、静かで優しかった。
「彼のこと、全部話さなくてもいい。
あなたが“どうしたいか”を、今一緒に見つけましょう」
そう言われて、初めて、私は自分の気持ちを吐き出した。
「好きなんです。でも、幸せじゃないんです」
「いつも我慢して、待って、嘘をついて……もう、疲れました」
すると先生は、こう言った。
「あなた、愛されるのが下手なだけ。
でも、本当の愛は、苦しまなくていいものなのよ」
涙が止まらなかった。
誰かに“否定されない”で気持ちを聞いてもらえたのが、
何ヶ月ぶりだっただろう。
「あなたには、あなたを一番に考えてくれる人が、必ず現れる。
そのために、今日を境目にしましょう」
電話を切ったあと、彼から着信があったけど、出なかった。
“今までありがとう”
“でも、もう自分を捨てる恋は、やめよう”
そう思えた夜。
私はようやく、「好きな人のために、泣かない私」へと変わる決意をした。
💬「それでも好き」を手放せないあなたへ
苦しい恋は、心が“本当に望んでいること”を見失わせてしまいます。
自分を責めないでください。
誰かを信じたこと、それ自体が強さだから。
「これでよかった」と思える日を、あなたにも。