1章:「いい恋してるね」と言われた瞬間、私は笑ってごまかした
「最近、いい恋してるね~!」
友達にそう言われた瞬間、私は思わず笑ってごまかした。
その言葉は、褒め言葉なのか、からかいなのか、それとも単なる世間話なのか。
一瞬、返事に困ってしまった。
というのも、そのとき私がしていた恋は、
朝起きてすぐにLINEの返信が来て、
「おはよう」って言い合う関係でもなく、
毎週末に会えるような安定感もなかった。
でも、なぜか胸が苦しいほどに彼を想っていた。
誰かの基準で測ったら“いい恋”には見えないかもしれない。
でも、自分にとっては間違いなく、今までで一番“リアル”な恋だった。
それでも、「うん、いい恋してる」って素直に言えなかったのは、
きっとどこかで“恋愛はこうあるべき”という型に、自分をはめていたからかもしれない。
2章:恋の“良し悪し”を決めているのは誰?
世間一般で言う“いい恋”とは何だろう。
会う頻度? 安定感? 愛されている実感? 将来の話?
「彼、超マメで優しいの。付き合って3ヶ月で指輪もらったよ」
「週に3回も会ってて、将来の話もしてる」
そういう話を聞くと、たしかに“いい恋”に見える。
だけど、いい恋の定義って、そんなに一律なものだろうか。
たとえば、月に一度しか会えなくても、心がしっかりつながっている恋。
毎日連絡はしなくても、信頼し合えている恋。
そのどれもが、他人からは見えない“内側のストーリー”を持っている。
私たちはいつの間にか、**恋愛にも“評価基準”**を持ち込んでしまっている。
恋人のスペック、関係の進展度、周囲との比較。
でも本当に大事なのは、自分の心が満たされているかどうか。
それ以上でも、それ以下でもないはずなのに。
3章:「幸せそうに見える恋」と「実際に幸せな恋」は別物
インスタの写真には、笑顔のカップル。
カフェでのおしゃれなランチ、手をつないで歩く影、記念日ディナーのタグ。
でも、その裏でどんな会話があったかなんて、誰も知らない。
「もう少し連絡してって言ったよね?」
「来月の旅行、ちゃんと予定してる?」
そんなすれ違いがあっても、写真には写らない。
逆に、表に出さない恋ほど、深くて穏やかだったりする。
一緒にいても写真を撮ることすら忘れて、ただ話し込んでしまうような関係。
私の知人で、3年間ひっそりと遠距離恋愛をしていた女性がいた。
SNSでは何も語らなかったけれど、電話越しに彼女の声はいつも穏やかだった。
「見せるための恋」と「生きるための恋」は違う。
本当に“いい恋”かどうかは、心の中にしか存在しない。
4章:「いい恋してるね」に込められた、優しさと呪い
この言葉の中には、ほんの少しの優しさと、ほんの少しの呪いが潜んでいる。
優しさは、「あなた、今ちょっと輝いてるね」っていう賞賛のまなざし。
恋をしている人は、どこか肌ツヤがよくなって、声にハリがあって、笑い方が軽やかになる。
それを見て、周囲は「いい恋してる」と感じるのだろう。
でも呪いもある。
「恋をしている=幸せそう」という単純な方程式。
「恋をしていない=ちょっと寂しそう」「恋が終わった=残念」
そういう価値観のフィルターが、無意識に含まれていることもある。
本当は、恋愛が人生の中心じゃない人もたくさんいるし、
“いい恋”じゃなくても、“いい人生”は送れる。
でも、「恋をしていない私には何かが足りないのかも」
そんな風に感じてしまうのも、また人間らしさなのかもしれない。
5章:私にとっての“いい恋”を、私が決める
ある日、私は自分に問いかけてみた。
「今している恋は、私を笑顔にしてくれてる?」
答えは、YESだった。
涙が出る夜もあったけど、
想うことで前向きになれた。
会いたい人がいるだけで、今日を頑張ろうって思えた。
それならもう、それでいい。
“いい恋”かどうかは、他人が決めるものじゃない。
自分が、自分の気持ちに正直でいられるなら、それが一番の“いい恋”。
私たちはつい、恋愛を競い合いのように考えてしまうけど、
本当はそれぞれに、違うペース、違う形があって当然。
「ちゃんと報われる恋じゃなきゃ意味がない」なんてルール、
誰が作ったんだろう?
好きになって、傷ついて、また前を向いて。
その繰り返しの中で、自分をもっと好きになれてるなら、
それはもう立派な“いい恋”なんじゃないかな。
エピローグ:「いい恋してるね」と言われたら、こう答えたい
最近、また言われた。
「なんか、いい恋してる顔してるね」
私は笑って、こう答えた。
「うん、自分でそう思ってるよ」
それが、たとえ誰かにとって“正解じゃない恋”でもいい。
この恋は、私にしかできない恋だから。
“いい恋”って、人に見せるためじゃなく、
自分を大切にできているかどうかで決めたい。
今日も、誰かの恋が上手くいきますように。
そして、うまくいかない恋に苦しんでいる誰かにも、
「その恋、悪くなかったね」と思える夜が訪れますように。