恋をしなくなったのは、
「忙しいから」とか「タイミングが合わないから」とか、
いろいろ理由をつけていたけれど、
本当の理由はもっとシンプルだった。
——もう傷つきたくなかった。
好きになった人に裏切られた記憶。
一生懸命尽くしても、最後には「重い」と言われた日々。
自分のすべてを預けた先で、あっけなく失恋した夜。
恋は楽しいはずなのに、
思い出すのはいつも“うまくいかなかった記憶”ばかりだった。
それなのに周囲は、
「恋しなよ」「いい人紹介するよ」なんて、
まるで恋をしていないことが“欠け”かのように言ってくる。
でもこっちは、ただ平穏に生きたいだけ。
“あの感情のジェットコースター”に、もう乗りたくないだけ。
そんなことを思いながら、
今日もベッドの中でスマホをいじりながら、
マッチングアプリを開いては閉じる。
誰かと繋がりたい気持ちと、
また傷つくかもしれない怖さの間で、
私はずっと、ひとり綱引きをしている。
一歩踏み出すことが怖くなったのは、
あのとき、本気で誰かを愛した証拠だ。
愛するって、勇気がいる。
自分の弱さや過去の痛みをさらけ出さなきゃいけないし、
「もしかしたら報われないかもしれない」という不安と向き合うことだから。
でも、だからこそ恋は特別で、
その人と分かち合えるものがあるのだと思う。
それでも、しばらく恋から遠ざかってしまうのは悪いことじゃない。
本当に怖いのは、恋をして傷つくことじゃなくて、
自分の心に嘘をつき続けることかもしれない。
「平気なフリ」も、「興味ないフリ」も、
自分を守る手段だったのは知ってる。
でも、その殻の中に閉じこもってばかりじゃ、
本当にほしかった“誰かとのぬくもり”には出会えない。
また誰かを好きになって、
また裏切られるかもしれない。
でも、次はちゃんと「自分を大切にしながら恋をする」って選択肢もある。
もう、昔のように自分をすり減らす恋はしなくていい。
「好きだから全部我慢する」なんて愛し方じゃなくて、
「好きだけど、自分を守ることも忘れない」愛し方を。
傷つくことは、きっともう怖くない。
本当に怖いのは、自分の心を誰にも見せないまま、
“何も感じないふり”を続けてしまうことだ。
恋をして傷つくことがあっても、
そのたびに、私たちはちゃんと立ち直ってきた。
涙を流して、友達に聞いてもらって、
少しずつまた前を向いてきた。
そのたびに、ちゃんと強くなってきた。
だからもし、今夜あなたが
「もう恋なんてしたくない」って思っていたとしても、
きっとまた、誰かに出会う日がくる。
そしてそのとき、
今の自分にしかできない“新しい恋の形”が見えてくるかもしれない。
怖いなら、無理に動かなくてもいい。
ただ、「恋が怖い」と思ってる自分に、
そっと優しくなってあげてほしい。
それが、次の恋の扉を開く第一歩になるから。