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第2話『ピノ・ノワールと、手放せなかった夜』

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― 優しさに甘えていたのは、私だったのかもしれない。


別れ話をしたのは、秋が深まりはじめた夜だった。

空気が乾いて、少し冷たくなってきたせいか、
彼の言葉は思っていたよりもすんなり胸に染みこんでいった。

「…きみのこと、嫌いになれたらよかったのにね」

テーブルの上には、まだ口をつけていないグラスが2つ。
開けたばかりのピノ・ノワールは、明るいルビー色のまま、静かにそこにあった。


私たちは、恋人というより“長く続いてしまった関係”だったのだと思う。

好きだったのは、たしか。
けれどその「好き」は、いつしか惰性にすり替わって、
優しさという名の逃げ道にしていた気がする。

彼はいつも私の言い訳を許してくれた。
私も、彼の優しさにすがることで、自分を守っていた。

「きっと大丈夫」って言われるたび、私は、何も決断しなくて済んだ。

でも、大丈夫じゃないと気づいたときには、
この関係はもう、どこにも進めなくなっていた。


ピノ・ノワールは、不思議なワインだ。

軽やかで繊細。けれど、どこか芯があって、複雑さを秘めている。
まるで、本当は壊れかけている関係を、それでも守ろうとしていた自分のようだった。

グラスを傾けると、赤い果実の香りがふわりと広がった。
チェリー、ラズベリー、かすかなスパイス。

口に含むとやわらかく、するりと喉を通る。
でも、その後に残るわずかな苦みが、何かを思い出させた。

ーー優しさの中に隠した、本音の苦み。


「もう、戻らないほうがいいと思うよ」

彼がそう言ったとき、私はうなずいた。
それが正しいと、ようやくわかったから。

静かに、グラスを合わせた。
「さようなら」の代わりに。


“優しさの裏にある本音”を感じる1本

ブルゴーニュ ピノ・ノワール(ライトボディ・赤ワイン)

  • 【産地】フランス・ブルゴーニュ地方
  • 【品種】ピノ・ノワール
  • 【香り】チェリー、ラズベリー、シナモン、土や葉のニュアンス
  • 【味わい】軽やかで繊細。タンニンはやわらかく、優しい口当たり
  • 【相性】鴨肉、キノコのリゾット、豚しゃぶ、繊細な和食とも好相性

初心者でも飲みやすい赤ワインの代表格。
繊細さの中に、余韻が静かに残る一本です。


どこかで、やさしく終わりたい夜に

LOIN(ワインショップ ロワン)では、
こうした“軽やかだけど深い”ワインも、初心者向けに紹介されています。

今夜、誰かとの距離を見つめ直したいとき。
そっと寄り添ってくれる1本が、ここにあります。

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