蓮来

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『テンプラニーリョと、秋風の再会』

――もう二度と会うことはないと思っていた。でもあの風が、あなたの名前を運んできた。10月のはじめ、街路樹の色がほんのり紅くなり始めた頃。会社帰りにふらりと立ち寄った駅ナカのカフェで、彼に再会した。4年前に別れた元恋人。理由は“価値観の違い”...
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『シャブリと、忘れられない言葉』

――「きみは、まっすぐすぎるんだ」あのときの彼の声だけが、今でもずっと胸に残っている。彼と付き合っていたのは、もう6年前になる。私は26歳、彼は34歳。恋に全力で、まっすぐで、相手に期待しすぎる私を、彼はいつも優しく受け止めてくれた。でも、...
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『ガメイと、始まらなかった恋』

――もし、あのときあと一歩だけ踏み出せていたら。私たちは“恋人”になれていたのだろうか。彼との関係は、なんとなく始まって、なんとなく続いて、そして――何も起きないまま、終わった。職場のプロジェクトで2ヶ月だけ一緒になった。ランチ、残業、駅ま...
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『夜のワインは、恋の代わりに。』スピンオフ

《リースリングと、遠距離の約束》――「距離は関係ないよ」その言葉が、一番遠くに感じたのは私だった。彼と出会ったのは、2年前の夏。ドイツ旅行で立ち寄った、ライン川沿いのワイナリー。同じツアーにいた彼は、日本人だけどベルリンに赴任中で、旅の最後...
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『シャンパーニュと、愛してはいけない人』

――乾杯したその瞬間、わたしたちはもう、嘘をついていた。彼とは、友達の結婚式で出会った。ハウスウェディングの開放的なガーデン、キラキラした新郎新婦、そして手にしていたのは、祝福のスパークリング――シャンパーニュだった。「君の笑顔に、泡が似合...
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『バローロと、決別の夜に』

――「今さら別れられるわけがない」それを一番思っていたのは、他でもない私だった。彼と出会ったのは28歳の冬。職場での立場も安定しはじめて、結婚なんてまだ先でいい、と思っていた頃。彼は10歳年上の経営者。初めて一緒に行ったレストランで、赤ワイ...
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『ヴィオニエの香りと過ぎ去った夏』

――あなたと過ごした夏が、まだ私の中で咲き続けている。彼と出会ったのは、南フランスの小さな村だった。アヴィニョンから車で1時間ほど走った先にある、丘の上のワイナリー兼B&Bで、私はひと夏のバカンスを過ごしていた。東京での生活に疲れ果てて、「...
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『カベルネ・ソーヴィニヨンと嘘から始まった恋』

恋の始まりは、ほんの小さな嘘だった。嘘だと気づきながら、私はグラスを傾けた。重たくて、温かくて、逃げられない味がした。「独身って言ってたよね?」「……うん」その日、彼の指に指輪はなかった。でも、彼の声にどこか“生活の匂い”を感じたのは、私の...
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『オレンジワインと、色褪せない初恋』

――ひとりじゃなかったけど、孤独だった。そんな恋に、終わりが来た日の夜。私は“曖昧な色”のワインを選んだ。初恋の彼と、長い年月を経て再会し、交際が始まったのは三ヶ月前。でもそれは、思い出の中の彼と付き合っていたようなものだった。優しいけれど...
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5.『ブラン・ド・ブランと新しい恋の始まり』

「泡の音って、なんだか恋が始まる時に似てませんか?」ワインバー「Noir」のカウンターで、隣に座ったその人は、そう言って笑った。この数ヶ月、ずっとここに通い詰めていたけれど、彼に会ったのは初めてだった。スーツ姿にスニーカー。時計はそこそこ高...