好きな人の「気持ち」が、一番わからない
「私のこと、どう思ってるの……?」
言葉に出せないまま、心の中で何度も呟いた。
友達には「付き合ってるなら安心じゃない?」って言われる。
でも、それができたら、どれだけ楽だろう。
彼──涼介(りょうすけ)は、普段から感情を表に出さないタイプだった。
穏やかで落ち着いていて、誰にでも優しい。
だからこそ、「私だけに向けられる特別な想い」が感じられなくて、不安になった。
デートをしても、何を考えているのかわからない。
「好きだよ」と言われることも減った。
連絡の頻度もまちまち。
「仕事が忙しいから」と言われれば、それ以上は何も言えなかった。
でも──本当は、すごく寂しかった。
自己嫌悪と疑心暗鬼のループ
好きだから、彼の負担になりたくない。
だから、不安を口にすることも我慢してきた。
でも、心の中ではどんどん疑いが膨らむ。
「私のこと、もう好きじゃないのかな」
「他に気になる人がいるのかも」
「私が重たいって思ってる……?」
そして、そんな自分を責める。
「こんな風に疑って、最低だ」
「自分に自信がないだけじゃん……」
優しくなりたいのに、優しくできない。
心配したくないのに、心配してしまう。
「私、どうしてこんなに面倒な女になっちゃったんだろう」
気づけば、恋をしているはずなのに、毎日が苦しくて、泣きそうだった。
「相手の気持ちがわからない」──その本当の意味とは?
悩みすぎて眠れなかったある夜、電話占いのサイトに辿り着いた。
“心の奥の気持ちを引き出す鑑定”という文字に惹かれて、人気の占い師・紫音(しおん)先生に電話をかけた。
震える声で相談を始めると、紫音先生はとても落ち着いたトーンで、こう切り出した。
「彼の気持ちが見えないと感じるのは、あなたが“彼を信じきれていない”状態にあるから。
でもそれは、あなたが“信じたいほどに不安”だということです。悪いことではありません」
「私が悪いんですよね……重たくて、疑い深くて……」
「いいえ。“わからない”のではなく、“わかろうとしすぎて、自分を見失っている”のです」
彼の気持ちが知りたい──その一心で、
千夏(ちなつ)は、彼の一挙一動に敏感になっていた。
でも、本当は……「自分がどうしたいのか」を見失っていた。
愛されているかどうかより、「私はどうしたいのか」
紫音先生は、カードを使って彼の本音を読み取ってくれた。
「彼は、あなたを大切に思っています。
ただし、彼にとって愛情表現は“言葉や態度”ではなく、“空気のような存在になること”。
あなたとは“そばにいること”自体が愛情なんです」
「……でも、私は言葉が欲しくて」
「それでいいんです。恋愛は、“わかりあおうとすること”が大切。
ただ、わかってくれないからといって、自分を否定しないでください」
紫音先生は、「気持ちがわからない恋」の苦しさは、「自分を見失ってしまう恋」だと語った。

“不安”は、あなたの「愛の証」
・不安になるのは、愛しているから
・愛されたいと思うのは、当然のこと
・相手の気持ちばかりに目を向けて、自分の気持ちを無視してはいけない
・“察してほしい”より、“伝える勇気”が関係を救うこともある
紫音先生に言われた言葉が、千夏の胸に深く刺さった。
「彼がどう思ってるかは、彼にしかわからない。
でも、“私はこう思っている”と伝えることは、千夏さんにしかできません」
恐れていた“本音”の先にあった、穏やかな朝
鑑定のあと、千夏は初めて、彼に正直な気持ちを伝えた。
「最近、あなたの気持ちがよくわからなくて、不安で……でも、それを言うのが怖かった」
涼介は少し驚いた顔をしたあと、ふっとため息をついた。
「……言ってくれてありがとう。
俺、不安にさせてたんだね。ごめん。
ちゃんと気持ち、伝えるようにするよ」
たったそれだけの会話。
でも、千夏はその日、久しぶりに安らかな気持ちで眠れた。
わからない恋に、飲み込まれないために──
・「気持ちがわからない」と感じたときは、自分の不安を見つめてみる
・相手の沈黙を“拒絶”と捉えず、“違う愛のかたち”として受け取る勇気を
・本音を伝えることは、怖いけれど、自分を守るために必要な行動
・占いは、気持ちを整理するための優しいツールになる
恋は、相手の気持ちを探るだけじゃなく、自分の気持ちと向き合うことでもある。
「わからない」と感じたら──一度、立ち止まってみてください。
あなたが何を求めていて、何を大切にしたいのか。
その答えは、ちゃんとあなたの心の中にあるのです。
