恋は、報われるものだと信じていた
「両想いなら、幸せになれると思ってたのに──」
千尋（ちひろ）が彼と付き合い始めたのは、春の終わりだった。
彼の名前は直哉（なおや）。
穏やかで、優しくて、言葉を選ぶ人だった。
「好きだよ」
付き合い始めの頃は、そんな言葉を毎日のようにくれた。
手を繋いだ帰り道、他愛ない会話、沈黙すら心地よかった。
でも、気づけばそれは、過去形になっていた。
「私ばっかり……」と感じ始めた日々
返信は遅くなり、電話も減った。
会いたいと誘えば「忙しいから」と濁される。
記念日も、彼からは何の連絡もなかった。
「私ばっかり……追いかけてる気がする」
千尋は、スマホの画面を見つめてため息をついた。
好きだという気持ちは変わらない。
でも、このままずっと“与えるばかり”でいいのだろうか。
デート中も彼はスマホばかり。
会話をしても、上の空。
千尋が話をやめると、沈黙が支配した。
──愛されているはずなのに、満たされない。
むしろ、付き合う前のほうが、彼のほうが積極的だった。
「なんで……こんなに苦しいの？」
「その恋、あなたを幸せにしていますか？」──電話占い師・翠蓮（すいれん）先生の言葉
ある夜、千尋は涙が止まらなくなり、スマホで「恋愛 電話占い」と検索した。
表示されたのは、“本音を引き出す鑑定”で人気の占い師、翠蓮先生のページ。
思い切って予約し、鑑定を依頼した。
「彼とは両想いのはずなのに、なんだか私ばかりが頑張っている気がして……
このまま付き合っていても、幸せになれるのか不安なんです」
千尋の声は震えていた。
言葉にすることで、改めて自分の辛さを実感していたから。
翠蓮先生は、彼の生年月日と千尋の情報をもとに、魂の波動と相性をリーディングしてくれた。
そして、言った。
「彼は、もともと“追いかけたい恋”に価値を感じる人。
千尋さんがどんどん尽くすことで、彼の“狩猟本能”が満たされなくなっている状態ですね」
「……じゃあ、私が悪いってことですか？」
「いいえ。“悪い”のではありません。“愛し方”がすれ違ってしまっているだけです」
恋愛は、バランス。あなたばかりが尽くす関係ではない
「千尋さんは、彼に対して“愛される努力”よりも“嫌われない努力”をしてきましたね？」
図星だった。
断られるのが怖くて、自分から誘ってばかりだった。
気に入られたくて、言いたいことも我慢していた。
「でも、それは“自己犠牲”であって、“愛されるための努力”ではありません」
翠蓮先生は、千尋にひとつのワークを提案した。
それは、
「1週間、LINEも連絡もこちらからは一切しない」こと。
怖かった。
連絡しなかったら、彼との関係が終わってしまう気がして。
でも同時に、気づいた。
「そんなに不安になる関係って……本当に愛されてるのかな？」
「私を大切にしない人を、これ以上大切にしたくない」──決意の夜
1週間のサイレント期間。
彼からの連絡は、5日目の夜にようやく届いた。
『最近どうしたの？ 忙しいの？』
いつもなら、すぐに返信していた千尋。
でも、その日はスマホを置いて、深呼吸した。
「やっと……私を探してくれた」
嬉しさよりも、どこか虚しさの方が強かった。
会話は復活したけれど、彼が変わったわけではなかった。
千尋は気づいてしまった。
「私は、ただ“好き”という気持ちにしがみついていたんだな」
付き合っていることに意味があると思っていた。
でも本当に欲しかったのは、「一緒にいて幸せだと感じられること」だった。
恋の終わりは、自己愛の始まり
千尋は、その数日後、彼に別れを告げた。
「私は、もう“追いかける恋”をやめたい」
彼は驚いた顔をしていた。
でも、それ以上引き止めることはなかった。
それが答えだった。
別れた夜。
電話占いで再び翠蓮先生に報告した。
「怖かったけど……すごく、心が軽いんです」
翠蓮先生は微笑むように言った。
「千尋さんが“自分を大切にする選択”をしたからですよ。
本当の恋愛は、“ふたりでつくるもの”です。
片方だけが追い続ける関係は、恋ではなく“依存”です」
自分ばかりが追いかける恋──そこから抜け出すために
・「付き合っている＝愛されている」ではない
・自己犠牲は愛ではない。愛される価値は、あなたにもある
・追うばかりの恋は、“自分の心を置き去り”にしている状態
・一歩引いてみたとき、相手の本当の気持ちが見える
・占いは、感情の整理と自己肯定の第一歩になる
あなたは、追いかけなくても、愛される価値がある。
あなたの笑顔を大切にしてくれる人は、必ずいる。
だからこそ──いま、勇気を出して、“自分を優先する恋”を始めてみませんか？
